ごあいさつ
外国人技能実習機構理事長の大谷晃大です。
外国人技能実習制度は、母国の経済や産業の発展を担う外国の人々に我が国の持つ技術や技能等をOJTにより習得してもらい、帰国後、これらを活かして活躍していただく、いわば国際的な「人づくり」に協力することを目的として始まりました。この制度は、平成5年にその前身となる制度が創設され、これまで、幾度かの変遷を経ながら、四半世紀の長きにわたり継続し、この間、この制度に基づいて多くの外国の人々が我が国を訪れました。しかし、この間、制度の趣旨や目的を理解しない者が、人手不足を補う安価な労働力の確保のための方策としてこの制度を悪用し、その結果、技能実習生を低賃金で酷使するなどの労働関係法令違反や、様々な人権侵害を引き起こすという弊害が生じるに至りました。
そこで、このような制度の悪用を防止し、制度本来の趣旨に沿った運用が行われるよう、平成28年の臨時国会において、いわゆる技能実習法が制定されました。当機構は、この法律に基づき設立され、主務大臣である法務大臣と厚生労働大臣から、制度運営における中核的な役割を委ねられました。機構に託された使命は、遠く異国の地から我が国の善意を信じ、夢と希望を抱いてやってきた外国の人々が安心して実習できる環境を守ることにあります。具体的には、新たに設けられた監理団体の許可制度、技能実習計画の認定制度に関し、技能実習計画の認定、実習実施者・監理団体へ報告を求め実地に検査する事務、監理団体の許可に関する調査等を行うとともに、技能実習生に対する保護や支援に関する業務を行っています。
ところが、時の経過に伴い、冒頭述べました技術移転による国際協力という制度目的が必ずしも貫徹されなくなり、また、一部の心ない者による制度の悪用により、実習生に対する人権侵害行為等看過できない事態が依然として少なからず発生しているという実情等を踏まえ、本年6月14日、技能実習制度を人材育成と人材確保を目的とした育成就労制度に改める法律が成立しました。新制度のもとでは、当機構は「外国人育成就労機構」と改称した上で、監督指導機能や支援・保護機能が強化され、そのために必要な体制等が整備された組織に改組されることになりました。
もっとも、新制度は、改正法の公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するとされています。したがって、今後、しばらくの間は、現在の制度運用が続くこととなり、その間、生身の実習生が我が国において実習を行うという状況が続く以上、実習生が安心して実習を行える環境を守っていくという当機構の使命に何一つ変わりはありません。一人でも多くの実習生に、日本に来て良かったと思ってもらいたい、そのように願っています。
このように、当機構は、これからも技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護という重要な役割と責務を果たすとともに、新制度の施行に向けた準備を着実に進めるため、法務省や厚生労働省はもとより、幅広い関係行政機関等と連携し、円滑な事業運営に向け、役職員が一丸となって活動して参ります。皆様方の一層のご理解、ご協力のほどをお願い申し上げます。
令和6年 7 月 1 日外国人技能実習機構 理事長 大 谷 晃 大